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【Kaleコラム】坂本龍一渾身の演奏を収めた最初で最後の長編コンサート映画上映

「教授」の愛称でも親しまれていた、世界的音楽家である坂本龍一さん。斬新なテクノミュージックが魅力だったYMOを知る世代としては、映画音楽でもすばらしい名曲の数々を残しながら、闘病の末、惜しくも2023年3月に他界されたニュースは大きな衝撃でした。

今でもその功績をたたえ、彼の残した音楽への様々なアプローチがなされていますが、中でも話題を集めたのが、2022年に8日間に渡って撮影された20曲からなるピアノ・ソロコンサート映画「opus」の存在。2年以上にも及ぶ闘病中ながら、最後の力をふりしぼるように演奏した曲のすべてが記録されたこの映画が、現在ホノルル美術館ドリスデュークシアター内で上映中です。

全編モノクロで、セリフはなし。息を呑むような緊張感が漂いながらも、坂本さんが愛おしそうにピアノを奏でる姿は、最初から最後までとにかく美しいの一言。ラストの「戦場のメリークリスマス」は、嘘偽りなく、全身鳥肌ものです。

撮影場所は、坂本さんが生前最も気に入っていたという「日本でいちばん音のいいスタジオ」NHK509スタジオ。ピアノは、長年愛用していたカスタムメイドのヤマハのグランドピアノ。そこから生まれた貴重な映像が、ここホノルルでも大きなスクリーンで鑑賞可能とは本当に嬉しい限りです。

私が足を運んだ時は、ピアノの先生と思われる方が、生徒さんらしき子どもたちを連れて観に来ていらっしゃいました。環境音楽のような静かな曲が多いものの、イメージや映像が目に浮かぶようなストーリー性のある楽曲が続きます。一人の芸術家が魂を込めて完成させた上質のコンサートが、一人でも多くの方の目と耳に届きますように。なお、6月1日2:00pmからは、坂本氏の2012年から5年間の活動を追ったドキュメンタリー映画「CODA」(2017年)の上映もあり。

「opus」
https://honolulumuseum.org/events/19222/
場所:ホノルル美術館内 ドリス・デューク・シアター
   900 South Beretania St. Honolulu
上映日:6月1日 7:00pm、6月2日 2:00pm
上映時間:1時間43分
料金:一般15ドル